徒然ブック

サッカーや映画の感想、日常生活などをつらつら書いていくブログ

リヴァプールFCを応援する理由について書くページ

f:id:mu-to1213:20171225175614j:plain

You'll Never Walk Alone

なんとなくNHKでやっていた試合を見て、なんとなく応援を始めた。それが私がイングランドのビッグクラブLiverpool FC(リヴァプールFC)を応援し始めた理由。当初はまだまだプレミアリーグの勢力事情なんて知らなかったから、リヴァプールがリーグ優勝から遠ざかっていると知っても「まぁそのうち優勝できるでしょ。ついこの間CL(チャンピオンズリーグ)で優勝したみたいだしさ」程度にしか思っていなかった。まさかそこから10年以上経って、国内カップを1度優勝するだけとは……。むしろ破産しかけていたことを考えれば、今の状況は良い方、なのかも。

リヴァプールFCを応援する理由①:強くない

長年応援しているファンには怒られるかもしれないが、正直言ってしまえばリヴァプールって大して強くない。だってそうだろう、自分が応援し始めた2006年から今日に至るまで、まともに優勝争いを繰り広げたのは08‐09シーズンと13‐14シーズンの2回だけだなのだから。そう、2回だけ。これ、仮にもビッグクラブを名乗るクラブとしては、余りにも情けない数字ではないだろうか。

ちなみに2010年代に入ってからはCL出場資格が与えられる4位以内に入ることすらままならず、安定して6~8位のポジションに居座り続けていた。ここまで行くと「おたく本当にビッグクラブ?」と思われそうだが、ビッグクラブはビッグクラブなのだ。KOP(リヴァプールファンの総称)に聞いたらほぼ確実にビッグクラブだって答えるでしょう。だからビッグクラブなんだよ。

そもそも応援しがいのあるチームというのは、最強のチームよりもリヴァプールのようなチームではないだろうか。もちろん贔屓目は入っている。強くないからこそ、無様な姿を見せ続けてくれるからこそ、でも時々良いところを見せるからこそ、応援したくなるもの。上手くいったときの歓びは倍、上手くいかなくても「いつものことさ」で済ませられる、とてもお得なクラブなのだ。もちろん、誰もが成功を信じて応援をしているはず。いつかきっと黄金時代を取り戻せる……そう信じて、声援を送り続けるリヴァプールファンは世界中にいるのではないだろうか。たとえ何度裏切られようとも。

リヴァプールFCを応援する理由②:試合が面白い(例外あり)

 「何でリヴァプールなんて応援してるの」と聞かれて、よくファンが口にする理由が「試合が面白い」というものだ。たしかに、イスタンブールの奇跡(CL決勝でミラン相手に3点差を付けられながら追いつき、最終的にはPK戦で勝利した試合)は早々見られない劇的な試合だったし、現在(2018年1月の時点)のリヴァプールの試合も非常に面白い。なぜか。とにかく点が入るからだ。どちらかというと中立な立場のファンが見たほうが楽しめるかもしれない(リヴァプールファンは失点するたびに心が死ぬ)。

ただし、リヴァプール=面白い試合をするクラブというわけではないと思う。たまたま現監督のユルゲン・クロップ、前監督のブレンダン・ロジャースがエンターテインメント溢れる試合を施行する監督だっただけで、退屈な時期もかなり多かった。近年クラブでもっとも成功を収めたラファエル・ベニテスだって、どちらかといえば守備的な監督だったし(自分は好きだったけれど)。

そしてやはり退屈な時代といえば、もはやリヴァプールファンにとっての黒歴史であるロイ・ホジソン監督時代だろう。毎試合イングランド的なサッカー(つまり前時代的)がピッチで展開され、スタンドは歓声よりため息の数の方が多かった。多分試合よりも試合観戦してるKOPの絶望的な表情映している方が、ドラマ性があって面白かったんじゃないかな。もちろん順位も最悪で、降格圏内に片足を突っ込んでいた。ちなみにこの時期はピッチ外でも悪名高い2人組のアメリカ人オーナーによって破産寸前に追い込まれるなど、まさに暗黒時代。

f:id:mu-to1213:20180111163427j:plain

みんなこんな表情でした。

そこから同じアメリカ人ではあるものの極めてまともなオーナーに代わり、監督はクラブ屈指のレジェンドであるケニー・ダルグリッシュへ交代。ようやくまともにクラブとして機能するようになったリヴァプールは、打って変わって移籍市場でも積極的な動きを見せるようになった。普通、復活すると思うよね?しないんだなこれが!

リヴァプールFCを応援する理由③:何度も裏切られる

たとえ何度裏切られようと応援する声をやめないKOPを「そうですか、では」とでもいう風に、何度も裏切ってくれるのがリヴァプールの特徴だ。英雄ダルグリッシュの元、鮮やかにこれまでの失態を巻き返すような進撃を見せてくれるだろうと期待した11‐12シーズンは、14勝14敗8分けの8位。中堅チームかな?

内容を見てみても、目玉とされた新戦力の英国人たち(アダム、ダウニング、ヘンダーソン)がことごとく期待外れであり(ヘンダーソンは後年覚醒した)、退屈な試合運びは正直ホジソン時代と大差なかった。ホジソンが解任された後の10‐11シーズンは内容結果共に今後が楽しみな出来だった分、裏切られた落胆もひとしおだった。というか、ホジソン時代よりがっかり度は上だったかも。最後は劇的な優勝を果たしたシティの裏で、ひっそり昇格組のスウォンジーにホームで負けていた。もはやJスポーツで放送すらしてくれなかった試合を、真面目に見ていた日本人KOPはどれくらいいただろう。

ただ、このシーズンに獲得したカーリングカップが、現在のところリヴァプールが獲得した最後のタイトルになっていたりする。

f:id:mu-to1213:20180111172623j:plain

もちろん、リヴァプールがKOPの期待を裏切るのは11‐12シーズンが最後ではなかった。ここ最近でもっとも大きかったのは、やはり14‐15シーズンだろう。このシーズンはクラブのすべてといっても過言ではないチームのキャプテン、スティーブン・ジェラードリヴァプールで過ごす最後のシーズンだった。

この偉大なレジェンドに有終の美を飾ってもらうため、KOPが期待したのは何よりもタイトル。ところがこのシーズンは、絶対的なエースだったルイス・スアレスが退団した影響が色濃く極度の不振に。リーグでは早々にタイトルレースから脱落し、久しぶりに出場したCLは屈辱のGL敗退。まぁジェラードの退団が決定したのは色々終わった1月だったけどさ、もう少し意地を見せられなかったかな。

主要なタイトルを獲得する望みは潰えた、ならば最後に残されたタイトル、FAカップを獲りに行こうと、KOPは怪気炎をあげていた。奇しくもFAカップ決勝の日(5月30日)は、ジェラードの誕生日。何たる偶然……! 優勝と誕生日を祝いながらキャプテンを送り出せるなんて!

この流れで十分察せると思うが、もちろんリヴァプールが5月30日にトロフィーを掲げることはなかった。というかその日は会場のウェンブリースタジアムにすらいなかった。何故って?準決勝で負けたから(しかも相手はリーグで低迷していたアストン・ヴィラ)。

この時ほどクラブに失望したKOPはいなかったのではないか。ついでに言うとジェラードがリヴァプールのユニフォームを着て挑んだ最後の試合(プレミアリーグ最終節 アウェイストーク戦)は、1-6という記録的な大差で敗北している。なかなかできることではないよね。


Steven Gerrard Leads Liverpool Players In EPIC Yaya / Kolo Toure Chant In Dubai

14‐15シーズンが終了した直後の動画。本人は割と元気そうだった。

まとめ

以上が私がリヴァプールを応援する理由。碌なものがない。でも、ダメなものに人って惹かれやすいよね。

読んでくれた人は分かると思うけれど、リヴァプールはKOPの期待を裏切ることに関しては1流だ。そして何度裏切られようと、新しいシーズンがやってくれば期待に胸躍らせるKOPも1流なのだ。

いい加減見限ろうかと思っても、変わらず応援する人を見ていると「やっぱりなんだかんだ期待できるかも……いやできるよ」って思ってしまう。それもリヴァプールの魅力の1つ。You'll Never Walk Aloneって言葉がとても染みるクラブなのだ。でも、そろそろ報われても良いんじゃないかな。

『相棒』シリーズについて語っていくページ

f:id:mu-to1213:20180206162035j:plain

2000年に単発ドラマとして放送され、2002年から連続ドラマ化されたテレビ朝日の人気ドラマ『相棒』。灰色の頭脳を持つ警視庁特命係の杉下右京(水谷豊)と割とコロコロ変わる相棒が、様々な事件に立ち向かっていくサスペンス&ミステリードラマだ。

2018年2月時点で16シーズンに突入しており、日本でも屈指の長期放送されているこのドラマは、1話ごとに脚本家が違うのが特徴。そのため話によって当たり外れが大きいのも大きな特徴である。というわけで、ここでは自分が見てきた中でお気に入りのエピソードと、お気に入りじゃないエピソードについてネタバレありで紹介していく。

お気に入りエピソード①:「ありふれた殺人~時効成立後に真犯人自首!?」

数多くいる相棒脚本家の中でもファンからの評価が非常に高い人物として知られる櫻井武晴氏がseason3で手がけたエピソード。現在は廃止された時効制度について深く迫った話であると共に、杉下右京と初代相棒の亀山薫の正義観の違いがよく分かる話である。

 路上で寝ている男を注意した薫(寺脇康文)は、その男から20年前に人を殺した、と突然告白される。小見山(信太昌之)というその男は、20年前、当時高校生だった坪井里子(小林千恵)を殺害。事件は5年前に時効が成立、民事の時効も1カ月前に成立していた。その小見山がなぜ今ごろ自首したのか。右京(水谷豊)や薫に問い詰められた小見山は、誰かに狙われている、というだけで…。

伊丹(川原和久)ら捜査一課の取り調べに対しても「誰かが自分を殺そうとしている」と脅えるだけで取り付く島がない。が、その一方で遺族に謝罪する気はまったくないらしい。結局、「俺はもう罪人じゃない」とうそぶく小見山は、怒る薫をよそにさっさと署から出て行ってしまう。

薫は右京に誘われるように20年前の里子殺害事件を改めて調べることに。当時担当だった港(清郷流号)によると、里子に目立ったトラブルがなかったことが逆に捜査を難航させたとか。その港にとっては刑事になるきっかけになった事件だという。

里子の父・貞一(上田耕一)が特命係にやってきた。里子を殺した犯人を教えて欲しいという。どうやら小見山が自首したという報道を見たらしいが、当然復讐を防ぐため教えるわけにはいかない。里子を殺されたショックに貞一の妻・幸子(吉村実子)は手首を切り自殺未遂までしたという。そんな苦しい胸の内を語る貞一に、同情する薫は唇を噛む。

小見山が何者かに殺害された。遺体の状況から手口が20年前の里子の殺し方と酷似していることがわかる。ということは、里子の両親が復讐殺人を?だとしたら、どうやって小見山が犯人だったということを知ったのか…。

小見山が殺される直前、薫が貞一夫婦の自宅を訪ねていたことが判明した。が、さすがに自重した薫は家の前まで行ったものの、貞一らとは会わずに引き返したという。とはいうものの、時間的には薫から小見山の名前を聞いた貞一らが恨みを晴らすことは可能だ。さすがの薫も一言もない。

小見山殺害が薫の責任ではないことを証明するには、貞一らが犯人でないことを証明するしかない。右京は落ち込む薫を元気付け、小見山を殺害した犯人を探すことに。

小見山が殺された現場からは2つの他人の指紋が検出されていた。一つは犯人のものに違いないが、もう一つは…。右京らは小見山の隣室に住む鈴木(正名僕蔵)という男の証言で、事件直前小見山が中年の男と言い争っていたことをつかむ。その男が怪しいが…。

                          ※公式HPよりあらすじ抜粋

がっつりネタバレしていくと、小宮山を殺したのは鈴木。理由はただの隣人トラブルであり、はずみで殺してしまったというものだった。しかし、過去に小宮山に殺された里子の両親がそれを知ることは永遠にない。警察は時効制度によって裁けなかった男が殺されたという事実は隠し、ありふれた殺人として処理することを決定したからだ。過去の殺人を悔やむことなく殺された小宮山は因果応報かもしれないが、なんとも言えないやりきれなさが印象的なエピソードである。

青い正義感に突き動かされ、結果としてより貞一や幸子を傷つけることになった亀山君に対して右京さんが突きつけた言葉は非常に辛辣で厳しい。この頃の右京さんはまだ若く鋭く、割と相棒の亀山君に対して容赦がなかった。一方で、何度も貞一らが警視庁に訪ねて来る度に真相は告げられずともしっかり応対する姿に彼の持つ正義感が伝わってくる。自分の軽率さを思い知り、最初は逃げようとしていた亀山君が最後は右京さんと同じ対応をした辺りにもタイトル通り相棒感があったと思う。

 

お気に入りエピソード②:「暴発」

season9で放送された櫻井武晴氏によるエピソード。麻薬取締部、通称「麻取」による潜入捜査を扱ったエピソードであり、いつもはみんなを導く杉下右京が徹底的に孤立する珍しい回でもある。

右京(水谷豊)と尊(及川光博)は、角田課長(山西惇)率いる組対5課と、薬物を違法に流している二見会の一斉摘発に参加。が、事務所から男の射殺体が発見された。組員たちが殺人について黙秘する中、厚生労働省麻薬取締部、通称「麻取」の五月女課長(尾美としのり)が、自分たちも内偵していた二見会の送検を手伝わせてほしいと言ってきた。見返りに薬物の入手ルートなど貴重な情報を、という条件に上層部も承諾する。一方、右京らは、薬物を買った人間が検挙の情報を事前に得ていたかのように逃亡したことを知る。さらに麻取が取り調べを行った翌日、突然、組員たちは死んだ男は銃の暴発が原因だった、と口を揃えて証言・・・。右京と尊が暴く薬物売買摘発の裏に隠された衝撃の真実とは?

                         ※公式HPよりあらすじ抜粋

ネタバレしていくと、射殺された男蒲田は麻取の潜入捜査官であり、撃ったのは麻取への協力者である二見会の後藤という男。死因は暴発ではなく、麻取のスパイであると勘付かれたことに気づいた蒲田が、後藤まで疑われないように自分を撃たせた、というもの。もしもこの真実が明るみに出れば、後藤は二見会にとってスパイを始末した信頼できる男という立場から一転、裏切り者として始末されてしまう可能性があり、麻取の長期に渡る捜査が無に帰してしまう恐れがある。蒲田の覚悟や、その想いを汲み取った五月女を前に、流石の捜一トリオ(三浦、伊丹、芹沢)なども戸惑いを隠せない。

しかし、いつも通り右京さんはそんな事情をまったく加味せず、ただ真実を明らかにしていこうとする。そこへ立ちふさがったのが、なんと2代目の相棒である神戸君。右京さんの持つ後藤と麻取捜査官が接触していたという決定的なデータを、彼は消去してしまった。「間違っているかもしれないけれど右京さんを信じる」という相棒だった亀山君との違いが、如実に表れた場面だったといえる。

このエピソードで良いなと思ったのは、登場人物が正しいか間違っているかは別として自分たちの信念で行動していた点。捜査官に命を張らせるやり方は間違っている、正しいと胸を張って言えるかと問いただす右京さんに「……胸を張って言えるはずがないじゃないですか。それでも私は、私の部下蒲田が命を懸けて守ろうとしたものは絶対に守る」と言い切った五月女。上の指示で当初の筋書き(暴発)通りに調書を作成したのかと詰る右京さんに「いいえ警部殿。私もね、自殺じゃなく、暴発事故にしてやりたい……そう思ったんですよ」と話す三浦。

自分の行動を後悔していない神戸君も含め、上の指示でとか保身のためではなく自分たちの信念に基づいて行動した人物が多かったため、より右京さんの孤独感が深まるエピソードとなった。特命係でのアングルがいつもと違う演出(右京さん側から撮ることで、特命係を人が去って行く姿が鮮明になる)もとても良かったと思う。

 

お気に入りエピソード③:「アゲハ蝶」

相棒は社会風刺的な話や国際問題を扱う硬派なドラマである一方、とんでもエピソードを多く扱っているドラマとしても知られている(冷凍イカで刺し殺す、便器に嵌めて殺す等々)。そんな中、season4で岩下悠子氏が脚本を手がけた『アゲハ蝶』は、斬新な殺し方をするわけではないが、登場人物みんなどこか狂っている、そんなエピソードだった。

野口史明(渡辺憲吉)の部屋。テーブルには蝶の標本と札束が置かれている。「お断りですよ」。テーブルをはさんで対峙する相手を、帰そうとする野口。その時…!
翌日、野口は自室で刺殺体となって発見される。そこへ、熱心な蝶コレクターの染井繁(飯田基祐)が、警察の制止を振り切り飛び込んでくる。「蝶を取り返してください!」。染井は、野口が持っていた世界に2体しかない新種の蝶『ミヤモトアゲハ』の標本のことを言っているのだ。確かに、前日、札束と一緒に置かれていたその標本は、室内から姿を消していた。ミヤモトアゲハの相場は300万円。もし、標本目当ての殺人だとすると、もう1体の持ち主も危ない。杉下右京(水谷豊)と亀山薫寺脇康文)はさっそく、保管場所の城南大学へミヤモトアゲハの第一発見者、宮本洋一郎教授(並樹史朗)を訪ねる。

標本は無事。だが、助手の小西美紗緒(板谷由夏)は、宮本教授の悠長な態度が心配でならない。するとそこへ、あの染井が300万円を持って訪ねてくる。ミヤモトアゲハを売ってくれというのだ。教授にその気はまったくないのだが、染井は連日のように現れるという。「あきらめませんよ…いつか必ず…」と、ぶつぶつ言いながら去って行く染井。
野口宅から盗まれた標本は、かつてオークションにかけられていた。300万円で落札したのが野口。競り負けた相手は染井だ。その後、染井はどうにか金を工面し、幾度となく野口の家を訪れたという。しかし、野口が標本を売ることはなかった。その無念さが、染井を動かしていた。「蝶を手に入れるためなら、どんなこともする…」。
その夜、城南大学に再び染井が現れる。美紗緒を捕まえて標本を売ってくれと迫る染井。札束はさらに増え500万円。実家の掛け軸を売ったという染井の狂気に、美紗緒は恐怖を感じ、逃げるように大学を後にするのだった。
あくる日、大学の研究室で宮本教授の他殺体が発見される。標本も見当たらない。当然、染井は重要参考人として聴取を受けるのだが、「天罰ですよ」と笑うばかり。「あの蝶を自分のものにする資格があるのは、この世でただ一人、僕だけなんだ…」。

教授も野口も、「あの蝶を心から愛してはいなかった」と言う染井。確かに、野口は染井のような蝶愛好家ではない。しかし自宅には、染井が持っていたのと同様の、ミヤモトアゲハの採取・目撃地点が詳細に記された地図があった。その分布状況を見て、右京はある確信を得る。ミヤモトアゲハの羽化地は、採取された地点よりずっと北にあり、季節風に乗って和歌山まで飛ばされてきたのだと。風上には、5年前に地元住民の反対を押し切って操業を開始したものの、1年で閉鎖となったある企業の工場があった。野口は、そこの元社員。また、宮本教授が代表を勤めていた蝶協会のメイン・スポンサーでもある。工場と今回の事件に、何か関係があるとしたら? 右京は、ミヤモトアゲハが工場の自然破壊による“異常固体”なのではと推理を広げ…。

                          ※公式HPよりあらすじ抜粋

あらすじからいろいろおかしいような……。ネタバレをすると野口、宮本を殺害したのは野口のいた会社の専務である小松原。殺害理由は「工場汚染によってミヤモトアゲハが生まれたと知られたら会社の存亡に関わるから」。しかし、真実はミヤモトアゲハは工場が建つ以前から生息しており、異常個体でも何でもなかった。つまり、小松原は殺人を犯す必要性はまったくなかった。右京さんよりそのことを告げられた小松原は泣きながら笑いだす。「こんな……こんな虫けらのために、私の人生は……」。一頭の蝶に人生を狂わされた、哀れな姿だった。

小松原の熱演もすごかったが、やはりこのエピソードで際立っていたのは蝶コレクターの染井。自室の蝶コレクションルームで上半身裸になって佇む姿、右京さんや亀山君が訪ねてくるとクローゼットに閉じこもる行動、最後美沙緒からミヤモトアゲハを譲られ「ありがとうございます……!ありがとうございます……!!」と号泣する姿はインパクト抜群である。他人からどう思われようと、自分の「好き」を貫き通せるオタクってすごい。犯人の小松原が会社のために罪を犯して転落していく姿を見た直後のため、余計にそう思わせるエピソードだった。

 

ワーストだと思うエピソード:「ダークナイト

バットマンかよ」と突っ込みを入れたくなるようなこのタイトルは、season13の最終回で放送された、3代目相棒甲斐亨(通称カイト君)の最終章として知られている。脚本は相棒生みの親である輿水泰弘氏。個人的には『相棒 -劇場版III- 巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ』も相当酷かったと思うのだが、あれは映画なので今回はこちらをワーストに選んだ。

犯罪者だけを狙った連続暴行事件が発生。犯人は、警察の手が及ばない隠れた悪党に制裁を加える「ダークナイト」と呼ばれる人物と思われた。ダークナイトは、ここ2年足らずの間に、制裁目的と思われる同様の事件を5件起こしており、世間の注目は高まるばかり。

右京(水谷豊)も、ダークナイトが一体何を目指しているのか興味をひかれている様子で、独自の捜査に乗り出す構えだった。そんな中、政務活動費の不正流用疑惑が持ち上がっている都議会議員が暴行される事件が起こる。目撃証言などから犯人はダークナイトと思われたが、今回は被害者が初めて死亡してしまう。

享(成宮寛貴)は模倣犯の可能性を疑うが、右京はその説を「全面的には支持できない」としながらも、被害者がこれまでの人物像とは違う上、犯行が殺人にまでエスカレートしていることに違和感を覚えていた。

果たしてダークナイトとは一体何者なのか? それは正義か?悪か?
右京と享、相棒としての3年の月日が問われる最後の事件!
あなたが目撃するのはシリーズ始まって以来の衝撃的な結末!

                         ※公式HPよりあらすじ抜粋

放送終了と同時に賛否両論(ほぼほぼ否)を巻き起こした本エピソード、ネタバレをしてしまえばダークナイトに扮していたのは甲斐亨。そう、他でもない相棒が事件の犯人だったのである。ただし、唯一の死亡者となった都議会議員を襲ったのはダークナイトに憧れる模倣犯。この模倣犯はその後カイト君と友人に制裁された。

カイト君がダークナイトに堕ちたきっかけは、友人である梶という男の妹。梶の妹は薬中の男にめった刺しにされ殺されたが、心神喪失状態であったことを理由に犯人は裁かれなかった。当然納得できず私刑を考えていた梶を犯罪者にしないため、カイト君が代わりに犯人をボコボコにして、法で裁けない悪人に鉄槌を下すダークナイトが登場したというわけである。

右京さんによってすべてを看破されたカイト君は逮捕され、懲戒免職という形で特命係から去っていった。そして当然上司としての責任を問われることになった右京さんは無期限停職処分を受けることに。こうして、激動のseason13は終わりを告げた。

ワーストの理由①:唐突過ぎる展開

公式のあらすじでは「誰がダークナイトなのか」みたいな書き方がされていたが、実際には本編開始から5分くらいでカイト君がそうであることが分かる。その瞬間多くの相棒ファンは「は?」となったことは間違いない。というのも、その瞬間まで正義感溢れる好青年だったカイト君がダークナイトになる伏線など一切なかったからだ。

しかも話が進んでいくうちに、カイト君は特命係在籍期間中にダークナイトとしての活動を行っていたことが明かされる。……それは唐突な説明で済ませるのではなく、シーズン中にそうした行動を思わせるようなシーンを挟んでいくべきなのでは? シーズンは20話近くもあったのだから。

ワーストの理由②:カイト君のキャラが崩壊している

ワーストな理由として1番大きいのがこれかもしれない。相棒が犯罪者だったという衝撃的な展開を特に何の伏線もなくやってしまった結果、それまでコツコツ築き上げてきたはずの各キャラクターが音を立てて崩壊してしまったと思う。

まずはなんといってもカイト君。season11で初登場して以来右京さんの相棒を努めてきた彼は、単純で粗野な面がありながら意外と頭の回転は速く、本人は嫌いながらもお坊ちゃんな部分は隠せず、そして何より正義感にあふれた人物だったはず。特に正義感という面では組織に配慮するところのあった神戸君よりも右京さんに近い確かなものを持っていたはず。

それが何をどう間違えたらダークカイトになるのだろうか。しかも、100歩譲って最初の事件自体は友人のためという理由があったかもしれないが、その後の事件を起こした理由については「なぜあんなことをしたのか分からない」と自分で言ってしまう始末。正直同情のしようがなくて逆に困る。作中で右京さんの才能の陰に隠れる自分に苦しみ、ダークヒーローとして賞賛を浴びることに快感を見出していたみたいな説明がされていたが、それってただの愉快犯だよね。

ついでにこの話がより後味悪くなる理由がカイト君の恋人である笛吹悦子の存在。season11の初めからカイト君の恋人として登場した悦子は、喧嘩ばかりしていた亀山・美和子と違い、常にカイト君を支えてくれる立場だった(故に面白みもあまりなかった)。そんな悦子はseason13中に妊娠が発覚。良かった良かったと思わせておきながらのダークカイトである。しかも、最終話で悦子は急性骨髄性白血病を発症してしまい、明日をも知れぬ身になってしまう。そんな中でのダークカイトである。外道にも程があるのでは?結局悦子もカイト君と同じように本シリーズで退場となったので、その後本人や子供がどうなったかはまったく触れられない。扱い酷すぎ。

ワーストの理由③:右京さんのキャラが崩壊している

ダークナイト』でキャラが崩壊したのはカイト君だけではない。この話を観終わったとき、多くの相棒ファンはこう感じたはずだ。「右京さん気づかなかったの?」と。シリーズを通して杉下右京は並外れた推理力(時には人外レベル)を発揮し、数々の犯罪者を追いつめてきた。そこに人情などは一切挟まず、時には行きすぎなくらいの正義感で悪を捌くのが、右京さん最大の特徴であり、魅力だったはず。

それがどういうわけか、この『ダークナイト』では推理力が大幅に劣化してしまった。常に行動を共にしていた相棒が実は犯罪を重ね続けていた(カイト君が事件を起こしたのは特命係に入ってから)のに、まったく気づくことなく、むしろかなりの高評価を与えてしまっている。犯人が相棒だったから目が曇ってしまったのだろうか。それってもはや右京さんじゃないでしょう。ただの水谷豊だよ。この右京さんのキャラ崩壊は、非常に罪深いと思う。なぜならカイト君はこれにてお役御免なので視聴者が目にすることはなくなったが、右京さんはそういうわけにいかないのだ。

今後のシリーズでいくら右京さんが優れた推理力などと褒められても「でもお前自分の相棒が夜な夜なダークカイトしてたの気づかなかったよね」という目で見てしまう。ついでに言うと、『ダークナイト』のラストシーン、何故か空港で右京さんと逮捕後のカイト君が再開するシーンも最悪だと思う。上記したように、カイト君の犯した犯罪行為は擁護の余地がなく、身勝手で粗暴で断罪されるべきものだ。正義の名のもと人情など意にも介してこなかったはずの右京さんが、なんで最後ちょっといい雰囲気でカイト君と話しているんですかね。これのおかげで、今後右京さんが正義がどうの言っても「でもお前自分の相棒にはやたら甘かったよね」という目で見てしまう。少なくとも、自分はそうだ。

どうすれば(個人的に)『ダークナイト』は満足したか

ここからは、どうすれば『ダークナイト』に満足できたか、個人的な意見をつらつらあげていく。まずシーズン中に伏線を散りばめるのは最低条件だ(動機によって必要以上に犯人を庇う、最近身体を鍛え始めた、友人の梶を早い段階で出演させる等々)。

もっといえば、カイト君がダークナイトになったきっかけを変えたい。友人の妹が殺されたという理由じゃ弱すぎると思うし、友人を犯罪者にしないためというのも綺麗ごと過ぎてまったく心に響かない。

というわけで、ここは殺されたのは友人の妹ではなくカイト君の妹だったという風に変更したい(もちろん妹がいたというのは事前にしっかり説明させる)。妹を殺した犯人を警察が特定できない中、カイト君のみが犯人にたどりつき、刑事としてではなく兄として私刑を与えた、みたいな。肉親を殺された怒りで犯罪に走るというのは、ありきたりではあるが王道で感情移入もできる。妹の死をきっかけに父親の甲斐峯秋とギクシャクしていたとすれば非常に自然ではないだろうか(そもそも何でこの父子が不仲なのかもよく分からない)。

それか思い切って殺されるのは悦子にするパターンだ。彼女は妊娠していたので、カイト君は恋人とお腹の子供をいっぺんに失うことになり、ダークナイトになるのも大いに納得できる(『24』トニー・アルメイダもこのパターン)。どうせ酷い扱いを受けるなら、悦子にも大きな役割を与えるべきだったと思う。まぁこの場合、シーズンそのものが大きく変化してしまうけれども。

もちろん上記のような真相が発覚した後であっても、右京さんは徹底してカイト君を相棒ではなく犯罪者として扱ってほしい。そこまでしてようやく、視聴者側もカイト君に同情的になれたと思う。

まとめ

『相棒』は今までずっと見続けてきたドラマだけれど、やっぱり自分は『ダークナイト』以降見方が少し変わってしまったのは否めない。やっぱり、あの展開は良くなかった。もちろん今回紹介した以外にも魅力的なエピソードは盛りだくさん(『赤いリボンと刑事』『ボーダーライン』『冤罪』辺りおすすめ)なので、興味を持ったらぜひ見てみて欲しい。だいたい午後4時くらいにテレ朝をつければやっているので。

映画『ゴーストライター』を紹介するページ

f:id:mu-to1213:20180116170226j:plain

映画について書くといいながらスター・ウォーズについてしか書いていなかったので、今回は今まで自分が観てきた映画のなかでも、強く印象に残っていて、そこまで有名ではない映画『ゴーストライター』について紹介していく。ネタバレは途中まで避けていく予定。

巨大な陰謀に巻き込まれていく、ゴーストライターの静かで孤独な戦い

中谷美紀の出ていたドラマや某作曲家は関係ない。ここでおすすめする『ゴーストライター』は、ポーランドの映画監督ロマン・ポランスキー(代表作に『戦場のピアニスト』など)が撮った政治スリラー映画のことだ。作品も濃いがこの監督自体も相当濃い。

主人公のゴーストライターを演じるのは、スター・ウォーズでオビ=ワンを演じたユアン・マクレガー。またスター・ウォーズかと思われそうだが、これはたまたま。

ストーリーは、あるゴーストライター(作中名前は出てこない)が元英国首相アダム・ラングから自伝小説を代筆して欲しいという依頼を受けるところから始まる。元々依頼していたライターが事故で亡くなったため、急遽回ってきた仕事だった。アダム・ラングはアルカイダの容疑者をCIAに引き渡し拷問させた疑惑があるなど、なかなかいわくつきの人物。

色々危険な臭いが漂う仕事に周囲は請けないほうが良いとアドバイスするものの、ゴーストライターは仕事を受託。アダムの邸宅があり、ラングの妻ルースや秘書兼愛人のアメリアがいるアメリカの孤島に連れていかれることになる。

基本的に物語は静かで、派手な展開は少ない。主人公のゴーストライターがブツブツこぼす愚痴にはユーモアがあり、登場人物同士の掛け合いもイギリス製作の映画っぽくウィットに富んでいて楽しいため、落ち着いて見られる作品と思うだろう。夫から顧みられなくなったルースが苦悩する様子なども見られ、ヒューマンドラマっぽい展開になるのだろうと感じるかもしれない(そんなに美しくないラブシーンもある)。が、この作品、物語が進んでいくうちにどんどん怖さが増していくのが大きな特徴だ。

別に突然ゾンビが出てくるわけでもなければ、グロい描写があるわけでもない。ただ、知ってはいけない世界に入り込んでいくゴーストライターが、見えない脅威に徐々に追いつめられていく姿は緊迫感ある画面の効果も手伝ってスリル満点。

アダム・ラングとは何者なのか、前任のゴーストライターであるマカラは何故死んだのかなど、ミステリー要素は申し分なく、驚きの展開も用意されている。静かでありながらスリルある映画が観たい人にはお勧めの一本だ。

 

ここからネタバレ

ゴーストライターはアダムの自伝を製作していく中で、前任者のマカラが事故ではなく殺されたのではと疑い始めていく。マカラが残した手掛かりを元に、調査を始めたゴーストライターがたどり着いた結論は、アダムがCIAと通じていたこと、真相を知ったマカラはやはり殺されていたという驚愕のものだった。

首相がスパイだったなんてことが知れたら、前代未聞のスキャンダルになることは間違いなし。韓国の朴槿恵大統領が可愛く見えるレベルだ(スキャンダルの話)。

ゴーストライターは勇敢にもアダムに自らの推理をぶつけるが、当然アダムはやんわりと否定。これは真相を突き止めたと知られたゴーストライターに死の危険が迫るなと思ったら、殺されたのはアダムの方だった。殺したのは、ゴーストライターにマカラが殺されたと匂わせていたお爺さん。戦争で息子を失い、ラングを恨んでいたのが原因だった。当事者が死に、あっけなく終わりを迎えそうだった物語が大きく動いたのが最終盤。

アダムの自伝が完成し、出版記念のパーティーに参加していたゴーストライターは、アメリアの言葉によって真実にたどり着く。マカラが残した原稿には暗号が残されており、それを紐解いていくと現れた言葉は「ラングの妻ルースは勧誘されてCIA局員になった エメット教授によって」というものだった。

そう、CIAと通じていたのはアダムではなく、妻のルースだったのである。真相にたどりついたゴーストライターはルースにそのことを告げ、パーティー会場を後にする。彼が画面からフェードアウトした後、猛スピードを出した車が駆け抜けていき衝突音とうめき声、散らばった原稿を映しながら本編は終わりを迎えた。

感想

展開の予想ができなかった!アダムが死んだ後も事件は続くって感じはしなくて、一件落着みたいなムードだったから。

ルースがCIAの人間だったと知ってから本編を見直すと、アダムがルースを遠ざけた理由や、ルースがゴーストライターに接近してきた理由が当初の印象からまったく異なったものになるのが面白い。アダムが殺された理由も、本当に息子が死んだ恨みだったの?と思ってしまう。本当は「妻の正体に気付いたから」とかだったら面白い。色々想像の余地を残してくれるのは大事だ。

ラストシーンで十中八九ゴーストライターは殺されているため、後味の悪い怖い結末となっているが、ゴーストライターが謎を解いたことをルースに告げ、勝ち誇った表情で会場から立ち去るシーンはカタルシスを得られてとても良かった。

このシーンいらないなと感じる場面がほとんどなく、テンポのいい展開に引き込まれ、余韻を残す終わり方をする、とても良い映画だったと思う。