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映画『ゴーストライター』を紹介するページ

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映画について書くといいながらスター・ウォーズについてしか書いていなかったので、今回は今まで自分が観てきた映画のなかでも、強く印象に残っていて、そこまで有名ではない映画『ゴーストライター』について紹介していく。ネタバレは途中まで避けていく予定。

巨大な陰謀に巻き込まれていく、ゴーストライターの静かで孤独な戦い

中谷美紀の出ていたドラマや某作曲家は関係ない。ここでおすすめする『ゴーストライター』は、ポーランドの映画監督ロマン・ポランスキー(代表作に『戦場のピアニスト』など)が撮った政治スリラー映画のことだ。作品も濃いがこの監督自体も相当濃い。

主人公のゴーストライターを演じるのは、スター・ウォーズでオビ=ワンを演じたユアン・マクレガー。またスター・ウォーズかと思われそうだが、これはたまたま。

ストーリーは、あるゴーストライター(作中名前は出てこない)が元英国首相アダム・ラングから自伝小説を代筆して欲しいという依頼を受けるところから始まる。元々依頼していたライターが事故で亡くなったため、急遽回ってきた仕事だった。アダム・ラングはアルカイダの容疑者をCIAに引き渡し拷問させた疑惑があるなど、なかなかいわくつきの人物。

色々危険な臭いが漂う仕事に周囲は請けないほうが良いとアドバイスするものの、ゴーストライターは仕事を受託。アダムの邸宅があり、ラングの妻ルースや秘書兼愛人のアメリアがいるアメリカの孤島に連れていかれることになる。

基本的に物語は静かで、派手な展開は少ない。主人公のゴーストライターがブツブツこぼす愚痴にはユーモアがあり、登場人物同士の掛け合いもイギリス製作の映画っぽくウィットに富んでいて楽しいため、落ち着いて見られる作品と思うだろう。夫から顧みられなくなったルースが苦悩する様子なども見られ、ヒューマンドラマっぽい展開になるのだろうと感じるかもしれない(そんなに美しくないラブシーンもある)。が、この作品、物語が進んでいくうちにどんどん怖さが増していくのが大きな特徴だ。

別に突然ゾンビが出てくるわけでもなければ、グロい描写があるわけでもない。ただ、知ってはいけない世界に入り込んでいくゴーストライターが、見えない脅威に徐々に追いつめられていく姿は緊迫感ある画面の効果も手伝ってスリル満点。

アダム・ラングとは何者なのか、前任のゴーストライターであるマカラは何故死んだのかなど、ミステリー要素は申し分なく、驚きの展開も用意されている。静かでありながらスリルある映画が観たい人にはお勧めの一本だ。

 

ここからネタバレ

ゴーストライターはアダムの自伝を製作していく中で、前任者のマカラが事故ではなく殺されたのではと疑い始めていく。マカラが残した手掛かりを元に、調査を始めたゴーストライターがたどり着いた結論は、アダムがCIAと通じていたこと、真相を知ったマカラはやはり殺されていたという驚愕のものだった。

首相がスパイだったなんてことが知れたら、前代未聞のスキャンダルになることは間違いなし。韓国の朴槿恵大統領が可愛く見えるレベルだ(スキャンダルの話)。

ゴーストライターは勇敢にもアダムに自らの推理をぶつけるが、当然アダムはやんわりと否定。これは真相を突き止めたと知られたゴーストライターに死の危険が迫るなと思ったら、殺されたのはアダムの方だった。殺したのは、ゴーストライターにマカラが殺されたと匂わせていたお爺さん。戦争で息子を失い、ラングを恨んでいたのが原因だった。当事者が死に、あっけなく終わりを迎えそうだった物語が大きく動いたのが最終盤。

アダムの自伝が完成し、出版記念のパーティーに参加していたゴーストライターは、アメリアの言葉によって真実にたどり着く。マカラが残した原稿には暗号が残されており、それを紐解いていくと現れた言葉は「ラングの妻ルースは勧誘されてCIA局員になった エメット教授によって」というものだった。

そう、CIAと通じていたのはアダムではなく、妻のルースだったのである。真相にたどりついたゴーストライターはルースにそのことを告げ、パーティー会場を後にする。彼が画面からフェードアウトした後、猛スピードを出した車が駆け抜けていき衝突音とうめき声、散らばった原稿を映しながら本編は終わりを迎えた。

感想

展開の予想ができなかった!アダムが死んだ後も事件は続くって感じはしなくて、一件落着みたいなムードだったから。

ルースがCIAの人間だったと知ってから本編を見直すと、アダムがルースを遠ざけた理由や、ルースがゴーストライターに接近してきた理由が当初の印象からまったく異なったものになるのが面白い。アダムが殺された理由も、本当に息子が死んだ恨みだったの?と思ってしまう。本当は「妻の正体に気付いたから」とかだったら面白い。色々想像の余地を残してくれるのは大事だ。

ラストシーンで十中八九ゴーストライターは殺されているため、後味の悪い怖い結末となっているが、ゴーストライターが謎を解いたことをルースに告げ、勝ち誇った表情で会場から立ち去るシーンはカタルシスを得られてとても良かった。

このシーンいらないなと感じる場面がほとんどなく、テンポのいい展開に引き込まれ、余韻を残す終わり方をする、とても良い映画だったと思う。